遺品整理と同様に相続手続きは人生でそう何度も経験することではありません。ご不安になられる方も多くいらっしゃいます。まずは相続手続きとは何か?そして相続手続きををスムーズに進めるためのポイントを順を追ってご説明致します。
遺産相続とは
遺産相続(いさんそうぞく)とは、被相続人(亡くなった人)が残した財産を相続人が引き継ぐことをいいます。引き継ぐ財産のことを「相続財産」と呼びますが、これは被相続人が有していたすべての財産が含まれます。預貯金や株式、不動産といったプラスの財産のほか、債権などのマイナスの財産も相続財産です。
遺産相続手続きの流れ
相続発生
1.死亡届の提出 |
2.公的年金・健康保険の手続き金 |
3.死亡保険金の請求手続き |
4.公共料金などの引き落とし口座の変更等 |
5.相続人の確定・戸籍謄本等の取得 |
6.遺言書の有無の確認 |
7.自筆証書遺言の場合には、家庭裁判所での検認手続き |
8.相続財産の調査、把握 |
死亡届の提出
死亡の事実を知った日から7日以内に死亡者の死亡地・本籍地又は届出人の所在地の市役所、区役所又は町村役場へ提出して下さい。
公的年金・健康保険の手続き
国民年金の場合は亡くなった日から14日以内に、厚生年金の場合は亡くなった日から10日以内に、年金事務所で年金受給停止の手続きを行う必要があります。健康保険については、国民健康保険、後期高齢者医療制度に加入していた方は、亡くなった日から14日以内に市区町村に保険証を返納します。故人が会社の健康保険に加入していた場合は、手続き方法を勤務先に確認しましょう。
死亡保険金の請求手続き
故人が生命保険に加入していたら、死亡保険金の受取が発生しますので、保険会社へご連絡をして頂く必要があります。 ご連絡をする際は、証券番号が分かるもの(保険証券等)が必要になります。
公共料金などの引き落とし口座の変更等
故人の口座は入出金ができないよう凍結されますので、公共料金等の引落とし口座の変更が必要です。電気、ガス、水道、インターネット、携帯電話等、各種契約の契約変更や解約手続きを行います。 手続きは、各契約先に連絡をする必要があります。また、パスポートや運転免許証の返納も忘れずに行いましょう。
相続人の確定・戸籍謄本等の取得
金融機関の手続きや不動産の登記等、相続手続きには、相続人を確定するために、戸籍謄本を揃える必要があります。相続人を確定させるためには、
①亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍
②相続人全員の現在戸籍
③子供がいない場合は、故人の両親の出生から死亡までの戸籍
が必要です。
戸籍謄本は、ご逝去されたことが記載された戸籍謄本だけでなく、出生からご逝去まですべての戸籍謄本が必要なため、取得に時間がかかることがありますので、早めに取りかかりましょう。
「思っていたよりも難しく、時間もかかる」、「集めてみたけれど、途中で断念してしまった」という声をお聞きすることがよくあります。しかし、戸籍謄本によって相続人を確定しないと、次のステップに進むことができません。
特に、以下に当てはまる場合は戸籍の取得に時間がかかりますので、注意が必要です。
(A)本籍地を異動しており、複数の市役所での取得が必要。
(B)子供がおらず、故人の両親の出生から死亡までの戸籍も取得が必要。
(C)代襲相続(※)が発生しており、本来相続人となるはずだった方の出生から死亡までの戸籍、代襲相続人の現在戸籍も取得が必要。
「相続人全員の現在戸籍」については、各相続人の本籍があるそれぞれの市役所で取得することになります。 相続人が遠方にお住まいの場合等は、各相続人に手配を依頼する必要も出てきます。
遺言書の有無の確認
故人は遺言書を遺していらっしゃいましたか?遺言書にはいくつかの種類があり、なかでも代表的なものが「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。 遺言の種類によって、手続きが変わってきます。
①自筆証書遺言
遺言者自身が自筆で作成した遺言。 遺言者が亡くなられたときは、遺言を執行する(遺言書通りに相続手続きをする)前に、遺言書を家庭裁判所に提出して検認の手続きをする必要があります。
②公正証書遺言
遺言者が、公証役場で公証人に作成してもらった遺言。 公正証書は、家庭裁判所での検認手続きは必要ありません。
新!自筆証書遺言の保管制度について
2020年7月10日から、自筆証書遺言を法務局で保管をすることができるようになりました。故人が遺言を作成していた可能性がある場合は、遺言書が預けられているかを確認しましょう。相続発生後の自筆証書遺言の交付請求は、全国のどの遺言書保管所でも可能です。また、法務局で保管されていた自筆証書遺言は、検認が不要となります。
自筆証書遺言の場合には、家庭裁判所での検認手続き
遺言書の保管者又はこれを発見した相続人は遺言者の死亡を知った後遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出してその「検認」を請求しなければなりません。「検認」とは相続人に対し遺言の存在及び内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在において遺言書の内容を明確にして、偽造・変造を防止する為の手続きです。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。
相続財産の調査、把握
次に取り掛かるのは、「相続財産の調査、把握」です。故人の財産は既に明確でしょうか。金融機関の通帳や証券会社からの運用報告書、保険会社からの手紙等を頼りに相続財産を特定していきます。
相続税の申告がある場合には、通帳を確認したり、残高証明書を取得するなどして、相続財産の種類と金額を明確にしておく必要があります。不動産についても、権利証を確認したり、市役所から固定資産税評価証明書を取得するなどして、土地や建物を特定しておく必要があります。
取引金融機関の把握が漏れると、遺産分割協議の話し合いにも影響する恐れがあります。通帳や金融機関からの郵便物等、手がかりがないか事前に家の中をよく探しましょう。
発生後3ヶ月以内
1.相続放棄・限定承認・単純承認の選択 ※期限:相続開始を知った日から3か月以内 |
相続放棄・限定承認・単純承認の選択
相続放棄や限定承認を行う場合には、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
参考
・相続放棄:相続人が被相続人のプラスの財産やマイナスの財産を一切引き継がない。相続放棄がなされると、他の相続人の相続分は、放棄者が初めからいなかったものとして算定される。
・限定承認:被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等に、相続人が相続によって得たプラスの財産の限度で被相続人のマイナスの財産の負担を引き継ぐ。
・単純承認:相続人が被相続人のプラスの財産やマイナスの財産の権利義務をすべて引き継ぐ。相続放棄や限定承認を行わなかった場合には、単純承認をしたものとみなされる(単純承認には、特別な手続きは不要)。
発生後4ヶ月以内
1.被相続人の所得税の申告・納付(準確定申告) ※期限:相続開始を知った日の翌日から4か月以内 |
2.遺産分割協議の実施(遺言書のない場合) |
3.分割協議の際の特別代理人等の選任 |
4.遺産分割協議書の作成(遺言書のない場合) |
5.預貯金・有価証券等の解約や名義変更 |
6.不動産の相続登記 |
7.ゴルフ会員権等の各種権利の名義変更 |
被相続人の所得税の申告・納付(準確定申告)
事業所得や不動産所得があった方については、相続開始を知った日から4か月以内に準確定申告を行う必要があります。故人がご生前に毎年確定申告をされていたのであれば、準確定申告を行う必要があるかもしれませんので、税務署や、生前に確定申告を任せていた税理士事務所へご確認ください
遺産分割協議の実施(遺言書のない場合)
相続財産の調査、把握が終わったら、遺言書のない場合、遺産分割協議を実施します。遺産分割協議とは、財産の分け方についてのお話し合いのことです。相続人全員で、故人の財産をどのように引き継ぐかを話し合います。
分割協議の際の特別代理人等の選任
未成年者とその親がともに相続人になる場合等には、未成年者に特別代理人を選任する必要があります(家庭裁判所に申立)。
遺産分割協議書の作成(遺言書のない場合)
遺言書が無い場合、遺産分割協議の結果を、「遺産分割協議書」という書面にします。不動産の相続登記や、相続税の申告の際には、この遺産分割協議書が必要になります。遺産分割協議書には相続人全員の署名・押印が必要です。財産の記入漏れなどの不備がある場合には、再作成が必要になる場合もありますので、間違えないように注意をしたいところです。
預貯金・有価証券等の解約や名義変更
①遺産分割協議書に相続人全員が署名、押印し、遺産分割協議が成立したら、次は、預貯金、有価証券等の解約や名義変更です。
②取引のあった銀行や証券会社等の取引について、解約や名義変更の手続きを行っていきます。
③金融機関ごとに手続書類(相続手続依頼書)が異なります。一般的には、手続書類には相続人全員の署名と押印が必要になりますので、金融機関ごとに異なる書類一枚一枚に、相続人全員が署名しなければなりません。
故人の取引金融機関の数が多ければ多いほど、解約手続きも手間と時間を要することになります。 金融機関に行く時間や、相続人間で書類をやりとりする時間を確保できるよう、スケジュールを確認しておきましょう。
不動産の相続登記
故人が不動産をお持ちだった場合は、不動産の相続登記が必要です。 不動産の相続登記は、不動産の所在地を管轄している法務局で行います。
ゴルフ会員権等の各種権利の名義変更
ゴルフ会員権やご自宅の火災保険などの契約があった場合には、それらも相続手続きが必要になります。
発生後10か月以内
1.相続税申告書の作成 |
2.相続税の申告・納付 |
相続税申告書の作成、相続税の申告・納付
相続財産が一定額を超えるようであれば、相続税の申告、納付手続きが必要になります。この手続きは相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。これまでご説明してきたように、戸籍謄本を取得したり、 遺産分割協議書を作成したり、金融機関の手続きを行ったりと、10か月というのは長いようであっという間ですので、早い段階から準備しておく必要があります。
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